個人事業主と法人では何が違う?法人成りについて知っておくべきこと

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法人は個人事業主の上位にあたる存在、ということではありませんが、事業主体が自然人個人から法人になることを「法人成り」と呼びます。

ここでは、なぜ法人成りが行われるのか、個人とは何が違うのか、といったことを解説していきます。

 

個人と法人で変わること

まずは、個人と法人とで何が変わるのか、簡単に違いを挙げていきます。

 

適用されるルールが変わる

よくある会社形態としては株式会社が挙げられます。

そして株式会社だと1人以上取締役を置かなければならず、その他監査役や会計監査人、取締役会や監査役会の設置に関する様々なルールが設けられています。

組織の構成方法にもルールがありますし、他にも会社法として多様なルールが作られています。

 

個人事業主に何らルールがないわけではありませんが、法人化し、組織として事業を営んでいくのであれば、こういった複雑なルールに準拠しつつ体制を整えていかなくてはなりません。

経営者・代表者を複数人置ける

個人事業主は事業主体が個人ですので、経営・代表ともに自分だけが担います。

しかし法人の場合は複数の経営者・代表者が置けます。

組織化して単に人手を増やすということのみならず、経営層を厚くすることで、より意思決定を慎重かつ高精度にすることが期待されます。

 

ただ、その分意思決定の早さは落ちてしまいます。

例えば取締役は各々会社を代表しますが、会社としての方向性を示すには取締役間で話し合いをしなければなりません。個人であれば良くも悪くも自分の判断のみですべてが決定できていましたが、法人成りした後はそうはいきません。

 

課税の仕組み

個人事業主と法人とでは課税の仕組みが異なります。

そのため、節税対策もその効果も変わってきます。

例えば利益が300万円程度であれば個人事業主のほうが納税額は小さくて済みます。

他方、利益が1,000万円近くにまで達すると、法人成りしたほうが少なくて済みます。

 

また、消費税に関しては法人成りのタイミングが重要になってきます。

法人であるとを問わず売上額が年間1,000万円を超えてくると翌々年から消費税の納付が必要になってくるのですが、個人事業主として売上が1,000万円を超え、翌年に法人成りすればさらにそこから2年後の納税義務となり、1年分課税機会を減らすことが可能なのです。

 

社会保険への加入

デメリットの要素も兼ね備えますが、法人成りによって、社会保険への加入が可能となります。

従業員へのサポートを厚くすることができる一方で、法人側の負担は増えます。保険料の負担に加え、事務的な負担も増えてきます。

 

まとめ

他にも法人化することで変わることは色々あります。制度上、法人成りによって直接的に起こる変化から、メンバーが増えることによる事務負担の増加などといった付随的な変化など様々です。

個人事業主が法人化をするベストなタイミングとは?

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個人事業主で「いずれは法人化しよう」と考えている方もいるのではないでしょうか。ここでは個人事業主が法人化をするベストなタイミング、その判断において重要な観点を解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

 

法人でなければできない事業を行うとき

事業内容によっては許認可を受けなければならないものもあり、その前提として会社設立が求められるケースがあります。

そのため、これまでの事業に加えて、こういった事業に取り組む場合にはそのタイミングで法人化をするしかありません。

 

より大きな資金調達をしたいとき

融資を受ける場合、個人事業主よりも法人であるほうが信頼を得やすく、資金調達を成功させやすいです。

そのため、新たに事業を拡大していきたいが資金が必要だ、と考えている方は法人化を視野に入れると良いでしょう。

ただし、法人化しさえすれば信頼が得られるわけではありませんので、数年の事業実績があった方が良いということも理解して計画的に進めることが大事です。

 

取引先の開拓を行うとき

前項の内容とも関係しますが、法人化しているほうが社会的な信用を得やすいことから、取引先の開拓にも効果を発揮します。

そこで「新たに多数の企業と取引を始めたい」「大手企業とも取引をしたい」「一般消費者にも広く製品・サービスを利用して欲しい」などと考えているのであれば法人化も一つの手であるということを知っておくべきでしょう。

 

消費税の納税義務が生じるとき

個人事業主の場合、売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が生じます。

ただし、実際に納税をしないといけないのは2年後です。

そして、法人でもこのことは同様で、売上が1,000万円を超えてから2年後に課税されます。

そのため、1,000万円を超えた次の年に法人化をすればできるだけ長く納税を避けることが可能となる仕組みになっています。このことも知っておきましょう。

 

課税所得が大きくなったとき

売上から経費等を引いた「利益」もポイントになります。

なぜなら個人事業主と法人では課税所得にかかる税率が変わるからです。

法令によって厳密な納税額は変わりますし、その他様々な事情も関わってきますので、細かくは専門家に計算してもらう必要があるでしょう。

なお、目安としては課税所得が800万円程度で法人化をするのが良い、とされています。

 

複数人で経営をしたいとき

事業規模拡大とも通ずる話ですが、取締役などの役員を複数設け、多数人で経営をしていきたいと考えているのであれば法人化すべきです。

個人事業主はその名の通り、個人向けです。そのためチームとして、組織的に活動をしていきたい状況がやってきたのなら法人化すべきでしょう。

減価償却に関する特例を知って経費を調整しよう

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パソコンや製造設備・機械、その他備品等を購入した場合、購入した年でまとめて経費に計上することはできません。それぞれの内容に合わせた耐用年数で割って計上していかなくてはなりません。

徐々に価値が下がっていくことに由来するためこれを減価償却と呼び、特例もいくつかあります。節税などを狙う上では特例についても把握しておくことが大事です。

 

購入金額が10万円に満たないケース

特例の1つですが、ある購入したものの価格が「10万円に満たない」場合には、その全額をその支出があった年の経費にすることができます。

当然ながら、使用可能期間が1年に満たないものも同じように扱うことができます。

 

購入金額が20万円に満たないケース

金額が10万円以上でも、20万円に満たない場合には一定の要件の下、当該資産の全部または特定の一部を一括して、その合計価額の1/3相当分を、購入した年以後3年間の各年分で、経費にすることが認められます。

簡単に言い換えると、「本来の耐用年数などに関係なく、取得した年から3年で、均等に減価償却ができる」という意味になります。

そしてこの場合の資産を「一括償却資産」と呼びます。

 

購入金額が30万円に満たないケース

青色申告をしている個人事業主、中小企業に限られますが、資産が30万円に満たない場合、年間300万円を限度に、一括計上できる特例もあります。

これは「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」と呼ばれます。

 

つまり、1つあたり30万円未満のものが複数ある場合、合計して300万円に達するまでであれば、まるまる取得した年の分として経費に算入できるということです。

工場に配備するような大きなものはなかなか適用させることは難しいですが、一般的な事務所に置かれるような各種備品であれば、この特例を活用することができるでしょう。

個人事業主や規模の小さな企業はぜひ知っておきたい特例です。

 

特例を活用するメリット

比較的低額の資産であれば、上記の通り、特例を活用できることが多いです。特例を使わなかったとしても最終的には全額分経費に入ることに違いはありません。

しかしながら、特例を活用することで「節税」や「経理業務の簡略化」といったメリットが得られます。

 

上手く計上することで節税し、キャッシュを残しやすくもなります。また、適用できるものに関しては、経理担当が細かく耐用年数等を把握し、処理する必要もなくなります。

特に、個人事業主のように1人で対応している場合などには、こういったバックオフィスの部分で省力化を図るのは大きな意味を持つでしょう。

減価償却の対象になる物の具体例や耐用年数を紹介

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減価償却をする場合、その資産の価額と特例適用の可否、そして耐用年数について知っておくことが大切です。ここでは、減価償却の対象となる物を紹介し、それぞれの耐用年数も列挙していきます。

 

減価償却は耐用年数がポイント

減価償却の対象になる物は、複数年に渡って使用可能な物です。

耐用年数が1年以上でなければなりません。そのため徐々に価値が下がって継続的に使用していくものであったとしても、10ヶ月でその価値がなくなると考えられるものはその年で丸々経費に計上できます。

 

そして、具体的な計上金額は耐用年数・使用可能期間に応じて変わってきますので、大きな支出があったとしてもその年における計上額はそれほど大きくならない可能性もあります。

経理担当、あるいは自分一人ですべて対応している個人事業主などは、以下で挙げる対象物と耐用年数について知っておきましょう。

 

減価償却対象と耐用年数

どんな物が対象になり、どれだけの耐用年数になるのか、これに関しては法定されています。

以下でその一部を列挙していきます。

 

対象物例)建物の耐用年数

  • 木造で、事務所用のもの:24年
  • 木造で、工場用のもの:15年
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造で、事務所用のもの:50年
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造で、工場用のもの:38年
  • れんが造・石造・ブロック造のもので、事務所用のもの:41年
  • れんが造・石造・ブロック造のもので、工場用のもの:34年
  • 金属性のアーケードや日よけ設備:15年
  • 金属性以外のアーケードや日よけ設備:8年

 

対象物例)生物等の耐用年数

  • 乳用牛:4年
  • 食用の牛:6年
  • 種付用のやぎ:4年
  • 種付用以外のやぎ:6年
  • なし樹:26年
  • 桃樹:15年

 

対象物例)車両の耐用年数

  • 一般用の、小型車:4年
  • 一般用の、自転車:2年
  • 運送事業用の、大型車:5年
  • 運送事業用の、自転車:2年

 

対象物例)備品の耐用年数

  • 金属性の事務机:15年
  • エアコン:6年
  • 電気・ガス機器:6年
  • パソコン:4年
  • コピー機:5年
  • 時計:10年
  • 看板:3年

 

対象物例)機械等の耐用年数

  • 農業用設備:7年
  • 食料品製造業用設備:10年
  • 総合工事業用設備:6年
  • 倉庫業用設備:12年
  • 飲食料品小売業用設備:9年
  • 宿泊業用設備:10年

 

やはり長く持たない物に関しては耐用年数が短く、素材やその他性質上長く使い続けられる物に関しては長期の耐用年数が設定されています。

 

他にも色んな物が減価償却の対象となっていますので、ご自身の事業で使用している大きな物、耐用年数が観念される物がある場合には、その耐用年数を調べるようにしましょう。

また、経費の額を調整するために何かを購入するのであれば、耐用年数もあらかじめ考慮しなければなりません。耐用年数に応じた額が算入されると分かっていないと、狙った通りの節税効果は得られません。

減価償却とは何?基本的な考え方やルールの概要を解説

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経費の大きさは、翌年以降収める税金の大きさを左右するため重要です。

しかし、大きな支出があったからといって常に丸々その年の経費に計上できるとは限りません。ここで観念されるのが「減価償却」です。ここではこの減価償却のルールについて解説していきます。

 

減価償却とは

事業用に大きな設備を備えたり、機械を置いたりした場合、それらの物は経年により徐々に価値が減っていきます。パソコンなどもそうですが、一度購入したものを永続的に使用し続けることはできません。

こういった徐々に価値が下がっていく物を「減価償却資産」と呼びます。

 

そして、減価償却資産を取得するのに支出した費用は、その時点で全額必要経費になるわけではありません。

価値が下がっていくのに合わせて消費するように、必要経費として計算するのです。

 

そのため減価償却資産に関しては使用可能期間の把握と分割の方法を知っておかなければなりません。

 

減価償却の意義

減価償却があることによって、思い通りに経費計上ができないことがあります。そこで、なぜ減価償却といった仕組みができているのか、と疑問に思うこともあるでしょう。

 

減価償却が必要とされる理由にはいくつかあり、その1つに「費用収益対応の原則」が挙げられます。

この原則は、期間の経過に伴い生ずる収益と費用の内容を対応させるというものです。

実際、資産は何年もかけて、経年劣化をしながら収益を生み続けます。そのため一括で購入をしたとしても、実質的には徐々に経費を使って利益を得ている状態に近いと捉えるのです。

 

減価償却にもメリットがある

ルールをよく知らない方からすると面倒に思うかもしれませんが、減価償却にもメリットがあります。

1つは節税効果の調整がしやすいということです。

一括で、購入した時点で計上しないといけないとすると、かえって困ることも出てきます。しかしこれを「原則分割して経費に算入し、例外的に特例を活用してまとめて処理することもできる」という扱いにすることで、事業者ごとに節税効果を調整しやすくなっています。

 

また、経営成績を正確に把握しやすくなるというメリットもあります。

一括での計上しか認められないと、その期における費用だけが莫大になってしまうことがあります。しかしこれを耐用年数に対応させることで、適切な損益計算もしやすくなります。

 

ここでは減価償却の概要や、基本的な考え方を紹介しました。

実務上は、少額減価償却資産の特例なども活用しつつ計上していくことが重要になりますので、特例の内容についても知っておく必要があるでしょう。

個人事業主は何をどこまで経費にできる?基本的な考え方や注意点も解説

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昨今、様々な働き方ができるようになり、個人事業主として活動しやすくなってきています。

しかし、個人事業主として事業を継続していくためには、ただ依頼内容をこなすだけでなく、経費の計上など、事務的な作業も適切に行わなければなりません。

特に身近な問題としては「何をどこまで経費として含めることができるのか」ということが挙げられます。以下ではこの疑問を解消するよう、基本的な考え方や注意すべきポイントなどを解説していきます。

 

何を経費にできる?

まれに、「個人事業主であれば生活費もすべて経費にできる」などという意見も聞きますが、これは間違いです。

場合によっては、私生活に密接に関わる出費も経費に含めることもできますが、単にプライベートで支出したものを経費に含めるのは違法です。

 

重要なのは、「事業を遂行するために必要で、そのために使った費用である」ということです。そのため同じ食事に対する出費でも、仕事終わりに食べた夕食と、取引先との打ち合わせを兼ねて会食をした、というケースでは扱いが全く異なります。前者は当然経費にできませんし、後者は経費になり得ます。

なお、勤務時間中に食べた昼食であったとしても、経費にはなりません。事業のために使った費用ではないからです。

 

支出の内容について、厳密にルールを確認する必要があるものもありますが、判断が容易ではなくあいまいなものも多数あります。

そのため、基本的には事業目的と言えるかどうかを大きな判断基準に考えます。

 

生活費でも一部経費になる

自宅で仕事をしている個人事業主の場合、「家事按分」について知っておく必要があります。

ルールの範囲内で適用させることで、効果的に節税効果が狙えます。

 

家事按分を簡単に説明すると、生活費をプライベート分と事業用の費用に分けることを言います。

例えば自宅が仕事場にしており、専用の部屋を設けているのであれば、その部屋分の家賃は経費と捉えることもできます。その部屋で消費した電気代や通信費なども同様です。

 

なお、按分の仕方には注意が必要です。

何割を経費にするのか、これには根拠が必要です。適当に2分の1などとするのではなく、「部屋数が全部で3つ、オフィスとして使っているのは1部屋だから3分の1」などと設定することが大事です。

 

経費にできないものに注意

家賃などが一部経費にできる反面、以下のものは経費にできませんので注意しましょう。

 

1つは事業者個人にかかる税金です。所得税や住民税などは事業のために必要な出費ではありませんので、含めることは許されません。

 

福利厚生も不可です。会社の場合だと福利厚生を有効活用できますが、個人事業主は従業員ではありませんし、家族が従業員の場合にはこれを経費として計上できません。

 

また、健康診断の費用も経費にできません。会社に属している場合とは異なり自己負担です。

個人事業主が最低限知っておくべき経費の注意点

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個人事業主となるのであれば、売上を出すためだけの仕事をしていたのでは不十分です。経費の計上など、バックオフィスの部分もきちんとこなせなければなりません。そこでここでは、まず知っておくべき、経費に関する最低限の知識、とりわけ注意すべきことを解説していきます。

 

経費の計上の仕方で負担が大きく変わる

ごくごく基礎的な話になりますが、事業の継続性は売上よりも収益が重要です。売上が非常に重要であることに違いはありませんが、収益・利益が生まれていなければ事業を続けることは困難です。そして売上に対する収益の割合を増やすためには経費を減らすことが基本となります。

 

しかし、収益が増え、所得が増えると、その分税金の負担が増えることになります。そのため、経費の計上の仕方によって事業者個人が負う税金等の負担が変わってくるということは理解しておかなければなりません。

 

領収書は確実に保管

それではもう少し実務的な内容に入っていきましょう。経費をバランス良く使えば税金等の負担が軽減されるということですが、そのためには、常日頃経費が発生したときに領収書を受け取らなければなりません。

なぜなら、国としては本当に経費として使ったのかどうかを確認したいからです。

本当は経費として支出していないのに経費にされていると、徴収できる税金が減ってしまいます。

 

なんでも経費になるわけではない

領収書を受け取っていれば何でも経費になるわけではありません。

当然、事業として使ったものだと説得できる内容でなければいけません。

 

例えば住民税や所得税などは事業そのものに関して発生したものではないため、計上負荷です。個人事業主がプライベートで購入したものもだめです。

逆に、自宅で業務をしているのであれば、家賃等の一部を経費として計上することは可能です。

 

税務調査を受ける可能性がある

確定申告で提出した内容が本当かどうか、税務調査を受ける可能性があります。

そこで正しいことの証明をするため、領収書などが必要になるのです。ただ、すべてが確認されるわけではありません。実際のところ調査を受ける例は少ないですし、よほど異常な計上をしていなければ調査の対象とはなりません。

 

調査の対象となりやすい例としては、例えば売上に対する経費の割合が大きすぎるような場合です。この場合、プライベートで支出したものまで経費に含んでいるのではないかと疑われる可能性がでてきます。

 

ここではごく基本的なことのみを紹介しましたが、重要なのは「嘘の内容を申告しないこと」、「経費に含めるのは事業目的で支出したものだけにする」ということです。税務署からペナルティを受けることのないよう、注意しましょう。

個人事業主と自営業は同じ意味?フリーランスとの違いなど、用語の解説をしま

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個人事業主」や「自営業(者)」など個人で仕事を行っている人の呼び方には、いくつかあります。これらにどのような違いがあるのかご存知でしょうか。ここでは、昨今耳にする機会も増えた「フリーランス」も加え、それぞれがどのような場面で使われるのか、どのように区別されているのか、類似している用語の整理をしていきます。

 

自営業ついて

自営業は、これらの用語の中でももっとも広い意味を持つ言葉です。

特に厳密な区分などはなく、自分自身で仕事をしている、事業を進めているような人を広く含みます。どんな種類の仕事をしていても該当し得ますし、その規模も関係ありません。傾向としては小規模であることが多いですが、「従業員数○○人以内」などと定められているわけでもありません。

 

個人事業主について

続いて個人事業主ですが、こちらは自営業者のうち特に、事業者として確定申告を行う立場としての区分にあたります。つまり税務に着目した場合の言葉であり、ある意味最もフォーマルな呼び方であるとも言えるでしょう。

開業届の提出は必ずしも必要ありませんが、法人であってはならず、自営業に比べると少しだけ限定された呼び名となります。

 

フリーランスについて

最後にフリーランスですが、こちらは比較的最近多く使われるようになった言葉です。

このことは、働き方の選択肢が増えたということが関係しているといえるでしょう。個人が雇用されることなく仕事を取ってくるということが珍しくなくなりましたし、WebサービスやITツールの充実などもあり、比較的従来よりも自由に仕事を取りやすくなってきています。

 

フリーランスが上の2つと大きく異なるのは、働き方に着目しているということが挙げられるでしょう。重要なのは業務委託を受け、請負をして仕事を行うというスタイルです。そのため例えば、ある自営業者が自ら仕入を行い、加工等を行い、それを顧客に販売するとなればフリーランスとは言いません。逆に、Webサイトの立ち上げをして欲しいという依頼を受けて仕事をしている場合にはフリーランスにあたります。

 

用語の整理

自営業は最も広い意味を持つ言葉で、
個人事業主はそのうち税務に着目した形式上の呼び名、
フリーランスは業務委託等を受けて事業を遂行するという働き方に着目した呼び名です。

いずれかにしか該当しないというものではありませんので「自営業を営んでいる者」かつ「フリーランス」、かつ「個人事業主」というシチュエーションもあり得ます。

税務調査されやすい個人事業主の特徴

前回の記事では、個人事業主が税務調査にあった体験談をご紹介しました。

今回は税務調査されやすい個人事業主の特徴についてみていきたいと思います。

 

 

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税務調査されやすい個人事業主の特徴

税務調査されやすい個人事業主には次のような特徴があります。

  • 売上に比較して利益が極端に少ない
  • 900万円台後半を売上とする申告が続いている
  • 現金で取引を行う業種を営んでいる
  • 申告書類に頻繁に記入ミスがある

 

また、国税庁は、個人事業主に対する税務調査の実態について公表していますが、それを見ると、税務調査されやすい業種がわかり、「過去の不正が多い業種を営んでいる」という場合も、同様に税務調査されやすいといえます。

 

 

売上に比較して利益が極端に少ない

売上に比較して利益が少ない場合は、経費を水増ししているのではないか、と疑われることがあります。

 

税務署は、業種ごとにどの程度の利益率があるのか、ということについては、長年の実績からある程度つかんでおり、個別の事情があったとしても、同業他社に比べて、極端に利益率が違うということは、何らかの原因があると考えます。

 

支払う税金の額をできるだけ少なくしたい場合、売上は通帳や領収書控えなどで確認しやすいため、経費を増やすことで利益を少なくする傾向があります。

 

特に、個人事業の場合は、事業と家計の境目が微妙で、家庭の出費を経費として回しやすいという特徴もあります。

 

そのため、実際には本当に利益が出ていなかったとしても、極端に利益率が低い場合は、税務調査の対象になりやすい、といえます。

 

900万円台後半を売上とする申告が続いている

売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税業者となります。つまり、1,000万円未満であれば非課税であり、消費税分を益税として入手できるため、それが続くと、売上を少なく申告していると疑われることがあります。

 

売上は毎年ほぼ同じになるということはあまりないため、なおさら作為的で不自然だと思われるのです。

 

売上の過少申告は、行動履歴や交通費などからも類推できますし、売上を抑えることで利益が少なくなりますから、家計の必要経費を支払う原資が説明できなくなるという可能性もあります。

 

現金で取引を行う業種を営んでいる

現金で取引を行う業種、いわゆる現金商売の場合、売上が通帳に振り込まれることが少ないため、売上を少なく申告しやすい特徴があります

 

また、現金商売では、取引の単価があまり大きくなく、請求書などをしっかり発行することが少ないため、売上の計算も大雑把になりがちです。

 

そのため、不正な会計処理を行っても、証拠が残りにくく、税務署も常に目を光らせている状態となっています。

 

申告書類に頻繁にミスがある

申告書類に頻繁にミスがある場合は、会計書類にもミスがあることが多く、意図するしないにかかわらず、調査で間違いなくそれが発覚します。

 

基本的に経理を担当しているのは決まった人なので、ミスが多いようだと、調査の必要性が高くなるということです。

 

過去の不正が多い業種を営んでいる

これは、公表されている業種を見れば明らかで、「平成30事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」には、1件当たりの申告漏れ所得金額の多い順から、

 

1位:風俗業
2位:キャバクラ
3位:経営コンサルタント
4位:システムエンジニア
5位:特定貨物自動車運送

 

などとなっています。

また、直近の10年分の1~5位も公表されており、同様に風俗業や貨物運送業、不動産業などが入っています。

これらの業種は、当然、税務署が目を光らせており、税務調査が入りやすい業種であるといえます。

 

 

この記事では税務調査されやすい個人事業主の特徴をみてきました。

もし心当たりのあることなどあれば専門家に相談してみてもよいかもしれません。

 

個人事業主が税務調査にあった体験談

個人事業主にも税務調査が入ります。

 

何も悪いことはしていないはずなのに、いきなり調査官が表れて、びっくりすることもあります。

 

そこで、この記事では個人事業主が税務調査にあった体験談についてお伝えします。

 

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個人事業主の税務調査体験談

個人事業主の税務調査について、その体験談を2名の方に語っていただきました。

 

建設業のMさん(当時41歳)の場合

仕事が終わって、家に帰ると、事務を任せている奥様が浮かない表情でMさんを待っていました。「税務署から連絡が来て、来月調査に行くので日程調整がしたい」とのこと。

 

思い当たる節がないMさんは、税務調査に関するネットの情報を確認する程度で、調査当日を迎えました。事務担当の奥様も同席です。

 

10時ちょうどに表れた若い調査官は、あいさつもそこそこに、メモを片手に質問を始めます。しかし、質問と言っても雑談に近い感じです。

 

「この辺は環境がいいですね」「何年前から住んでいますか」「自己所有ですか」「お子様は何人ですか」などの質問に答えていると、「これって確定申告書から全部わかる内容の質問では?」と疑問がわきました。どうやら、基本的なことでも、嘘をついていないか簡単に確認をしていたようです。

 

メモを取ってるように見えて、目線は室内をくまなく観察しているようで、ちょっとドキドキしました。しばらく目線が止まっていたのは、本棚でした。「税金対策」「上手な会計処理」などという書名に興味があるようで、会計で何か特別な操作をしているのかも?とでも思っているようでした。

 

だんだんと質問は、会計の具体的な内容に及び、何とか答えていると、「12時になりますので、1時間休憩をしましょう」と言って、外へ出ていきました。

 

午後は、領収書を一つずつ丹念にチェックしたり、決算書類を見たりして、16時過ぎに帰っていきました。

 

翌日も同様でしたが、人件費や外注労務費のことについてかなり詳しく調査され、パソコンに保存してある業務関係のファイルの中身まで確認されました。

2か月くらいして、特に問題はないとの連絡が来て、よくわからないまま終わったのですが、実は、3年ほど前から受注が急拡大した取引先があり、その会社で税務調査が入り、不正会計が発覚したとのことでした。

 

そのため、取引先にも調査をいれたものの、事務担当の奥様がかなり細かくExcelなどに、現場の状況から売上構成、経費の詳細に至るまで記載していたことで、整合性が証明されたようです

 

産業廃棄物収集運搬業のSさん(当時39歳)の場合

仕事の現場にいたSさんの携帯に税務署から電話があったのは、仲間と世間話をしているときでした。家に電話を掛けたが不在だったので、一緒に住んでいる弟から番号を聞いたようです。

 

その瞬間「税務調査だ!」と動揺してしまったのですが、とにかく、心象を少しでも良くするために、相手の希望する日程に何とか合わせました。

 

動揺したのは、仕事柄、主要な売上や仕入れはすべて現金で行い、面倒臭がりの性格もあって、帳簿をきちんとつけずに、毎年の確定申告は知り合いの税理士に適当に作ってもらっていたからです。

 

慌てて税理士に連絡をすると、とにかく会いましょうということになり、その足で会計事務所へ。

 

数年前から紹介で伸びた新規取引がかなり成功し、急に売上が増えていたのが引っ掛かったのかも、と言われましたが、何か操作などをした覚えはないので、とにかく帳簿を作成しようということになりました。

 

実は、税理士には簡単な帳簿はつけている、と嘘をついていたので、最初からの作成は大変でした。

 

売上については、納入先の処理業者に話をしてもらい、伝票を見せてもらうことになりました。できれば3年分あった方がいいと言われ、とにかく頼み込んで内容を写させてもらいました。

 

すると、申告したよりもはるかに多くの売上があったことがわかり、調査に入られる前に、修正申告を行いました。

 

調査当日、目つきの鋭い2名の調査官が来ていろいろと質問されましたが、税理士に立ち会ってもらえたこともあり、現状を正直に話すと、一応残っている領収書や請求書などを確認されましたが、パソコンも持っていないため、あまり調査する内容もないのか、2日で調査は終わりました。

 

修正申告が効いたようで、特に問題はなかったとのことでした。それからは税理士にもお願いして、きちんと帳簿をつけるようにしています

 

今回は、個人事業主が税務調査にあった体験談をご紹介しました。

自分が何も悪いことをしていなくても取引先の関係などでも調査対象となるようです。

 

今日の記事がみなさまのお役に立てればうれしく思います。

起業の流れ

今回は起業の流れについて見ていきたいと思います。

 

どんなに小さなビジネスでも、きちんと段取りを踏んで一歩一歩確実に実践する必要があります。

  • 事業概要の検討
  • 事業計画の作成
  • 資金計画の作成
  • 起業手続きの実行

 

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事業概要の検討

「こういう起業をしたい」というものがあったとしても、行おうとしている事業の概要について、冷静に検討することが必要です。

この段階を経ずにフワッと起業をしてしまうと、必ず壁にぶつかってしまいますので、注意しましょう。

 

事業概要を検討する手順は以下の通りです。

  • 起業で何を実現したいのか
  • 自分には何ができるのか
  • 具体的に何を起業するのか

 

起業で何を実現したいのか

最初に考えるべきなのは、起業で何を実現したいか、ということです。

世の中にある誰かの不便、不満、不安などの課題を解決して、最終的に自分がどうなりたいのかを考えます。

これが「理念」となります。

 

自分の考える商品やサービスをたくさん売りたい、でも構いませんが、それによって、人を幸せにしたい、お金持ちになりたい、世界一になりたい、といった高い理想像を掲げます。

いずれ増えるはずの仲間たちとも共有できるようなものが良いでしょう。

 

自分には何ができるのか

次に、自分を棚卸して、何ができるのかを明確にします。

資格やスキル、知識、経験、仲間、資金など、何があって、何が足りないか、足りない場合はどうするのか、などについて考えます。

 

具体的に何を起業するのか

上記の2つを掛け合わせて具体的に何を起業するのかを考えます。

先程の成功例を見てもわかる通り、現在は、何らかのサービスとITとを掛け合わせたものが多いですが、そういった起業家は当然、プログラミングが得意な訳です。

やったことがないもの、経験がないものに挑戦するより、できるもの、知識や経験があるものを起業した方が、成功する確率が高いのは言うまでもありません。

またこの段階で、対象となる事業に必要な許認可や業務経験、一定額以上の資本金などがないかどうか、調査するようにしましょう。

特に、すでにある事業であれば、競合となる商品やサービスについて、実際に購入してみるとその事業について理解が深まります。

 

事業計画の作成

事業概要が固まったら、事業計画の作成を行い、事業計画書を作成します。

事業計画書には以下の内容を記載します。

  • 環境分析
  • 事業構成
  • 数値計画

 

環境分析

起業しようとする商品やサービスと、該当する業種・業界について、その外部環境と内部環境を分析します。

  • 外部環境(マクロ環境):法規制、景気動向、環境問題、先端技術 など
  • 外部環境(ミクロ環境):市場規模、価格動向、顧客、ニーズ など
  • 内部環境:製品開発、生産能力、営業技術、経営能力 など

 

次に、各々の環境分析結果に基づき、SWOT分析などによって整理し、事業戦略を考えます。

 

事業構成

事業構成とは、簡単に言うと、戦略と戦術を明確にする、ということです。

具体的には、最初の段階から考えてきたものも含め、以下の要素を決定します。

  • 理念とビジョン
  • 販売や顧客などの数値目標
  • 商品やサービスの特徴
  • 商品やサービスの販売方法
  • 想定されるリスクとその対応策 など

 

数値計画

環境分析や事業構成から具体的に数値を想定し、下記の計算書を作成します。

  • 損益計算書
  • 損益分岐点分析
  • キャッシュフロー計算書

損益計算書については、3年~5年分について、その推移が一目でわかるように一つの表で作成します。

これらの計算書は、融資など申し込む際には必要な書類となりますので、内容が説明できるように、きちんと作成する必要があります。

 

資金計画の作成

事業計画に基づいて、必要となる資金が明らかになりますので、それを明確にします。

起業に当たって、最初に必要となる開業資金と、日々の事業運営に必要となる運転資金について計算します。

計算結果について、資金計画表として経費毎に細かく整理しておくと、起業後にも使用できて便利ですので、必ず作成するようにしましょう。

自己資金が必要な資金を下回る場合は、資金調達が必要になりますが、資金調達については次章で解説します。

 

起業手続きの実行

起業に関する最終的な準備として、下記の内容があります。

  • 詳細な事項についての決定
  • 具体的な手続と届出

 

詳細な事項についての決定

起業をする上で下記の事柄について、詳細に決定します。

  • 個人事業か会社設立か、会社設立場合はその種類
  • 自宅で起業するかレンタルオフィス等を利用するか
  • 屋号や社名、住所、目的、会社設立の場合は、資本金や取締役とその任期
  • 具体的な集客方法(ホームページやECサイト、SNSなど)

 

具体的な手続きと届出

個人事業の場合は、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出します。

会社設立の場合は、定款の作成と認証、登記を行い、税務署と税務事務所に届出を行う他、従業員を雇用する場合は、ハローワークや労働基準監督署などへの届出も必要となります。

 

 

起業の流れについて紹介してきました。

このブログの記事がみなさまのお役に立てればうれしいです。

大学生が起業のために資金調達する方法と学生起業よくある質問

大学生の起業シリーズの最後は、大学生が起業のために資金調達する方法と学生起業のよくある質問です。

 

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大学生が起業のために資金調達する方法

資金計画を行った結果、自己資金が足りない場合は、資金調達をする必要があります。

資金調達には、下記の方法があります。

  • 融資を受ける
  • 出資を募る
  • 家族に借りる
  • 資金を貯める

 

融資を受ける

35歳未満の起業家(事業開始後7年以内を含む)は、日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」を利用することで、新たに事業を始めるための資金や事業開始後に必要とする資金について融資を受けることができます。

また、都道府県や市区町村では独自の開業支援を行っていますので、起業を予定している自治体について必ず調査してみましょう。

 

出資を募る

クラウドファンディングやベンチャーキャピタル、エンジェル投資家から出資を募ることも可能です。

それぞれに関するWebサイトを確認して、チャンスがあれば遠慮なく利用することをおすすめします。

また、学生起業家を対象にしたビジネスプランコンテストも開催されていますので、入賞することで、賞金を資金として利用することもできます。

 

家族に借りる

まずは、ご両親に相談してみましょう。

きちんと事業の内容を説明して、返済方法なども記載した契約書も用意します。

また、税金も支払って、事業資金を正式に贈与してもらうという方法もあります。

 

資金を貯める

大学生には比較的自由な時間がありますから、アルバイトでも資金を貯めることができます。

フリーランス向けのクラウドソーシングサイトなどを利用することでも、仕事の受注が可能です。

起業したい事業に関連する業務を行う場合は、資金を貯めながら経験も積めるというメリットにもなります。

 

 

起業する際によくある質問

最後に、起業を志望する大学生のよくある質問についてお伝えします。

 

起業するのに大学の学部や偏差値は関係しますか?

はっきり言って、大学の学部や偏差値と起業の成功とは全く関係ありません。

たとえば、経済や経営系の学部に在籍(または卒業)しているからといって、起業の成功に影響を与えるということはありません。

 

文系学部でも、プログラミングを学んでいる学生はたくさんいますし、理系だからと言って、全員ITに強いということでもありません。

 

また、起業した際の経営規模や発生した利益額の比較をすることは、事業の内容や扱う商品・サービスの価格などによって左右されますので、全く意味のないことです。

 

起業するのにどのような知識や経験が必要ですか?

知識に関しては、起業したい商品やサービスとその関係は当然として、マーケティング、財務会計、ITの知識は最低限必要です。

起業前や起業当初は、ネットや書籍などでも習得できるレベルで構いませんが、ビジネスを大きく拡大させたい場合は、ある程度真剣に勉強する必要があります。

経験については、一口では言えませんが、アルバイトを含め全く働いた経験がない場合は、何かと苦労することが多いはずです。

できれば、短い期間でも構わないので、起業する事業かそれに類する業種・業界でアルバイトすることをおすすめします。

 

お金がなくても起業できますか?

何もない状態で始めるのは、さすがに無理がありますが、個人事業なら、パソコン1台あれば起業をすることは全く問題ありません。

 

ただし、大学生は比較的自由な時間がありますから、アルバイトなどである程度資金を貯めるのは簡単なはずです。

最初は小さく始めても、きちんと経営すれば、大きく拡大させることも十分可能です。

 

まとめ

3回にわたって、大学生の間に起業するメリット・デメリットや成功例などについて解説してきました。

起業は簡単なことではありませんが、だからと言って、極端に難しいというものでもありません。

 

また、起業の経験は、たとえ失敗しても、就職の面接時にも比較的高い評価を得ることができます。

せっかくの大学生活、自由な時間が多くありますから、起業について真剣に検討してみてはいかがでしょうか。