よく、法人と個人事業は信用度に違いがあると言われます。
当然、会社としても、一個人事業主と取引するより、法人と取引した方が信頼性が高いというのは想像が付きます。
でもその理由を具体的に説明せよと言われると、多くの人が「うーん」となると思います。
そこで、法人と個人事業の信用度が違う理由を考察してみましょう。
会社はあらゆるデータがクリアであるという事実
個人事業と比べて、会社の場合は、様々なデータが公開されています。
「資本金」「登記簿に役員・法人の所在地の記載」「(株式会社に限られるが年1度の決算書の公告義務」「個人事業と違い、所有と経営が分離されている」など、様々なデータが公に公開されています。
また経営と個人が概念上は分離されているため、個人は個人、会社は会社と明確な分離が行われています。
事業の永続性や許認可の継承も、法人の方が有利
加えて、事業の永続性や免許(許認可)という点でも、法人の方が有利と言えます。
まず、免許(許認可)という点では、個人事業の場合、代表者に対して免許が与えられるものの、代表者が亡くなるなど万一の事があれば、再度許認可を取得する必要があります。
一方法人であれば、許認可が法人に対して与えられているため、許認可の引き継ぎは個人のケースより容易になります。
事業の永続性という点でも、個人事業の場合は経営者=個人という側面が極めて強いですが、法人の場合は必ずしも経営者=事業の株式の所有者ではない、「経営と資本の分離」が実現されていますので、全く資本を有していない人物が経営に代表取締役として経営に参画するなどあっても問題はありません。
資本(株式)を有していても、仕事がある程度軌道に乗り、創業者の自分がいなくても大丈夫、とわかれば、有能な人物を経営に参画させ、自身はファウンダー・株主として存在し、事業には最小限しか関与しない、ということもできるのです。
融資を受ける際にも、法人が有利
日本政策金融公庫・金融機関から融資を受ける場合も、法人が有利です。
なぜなら、上記で述べたとおり、会社が登記されているという公的な証明があり、元々社会的信用力があるからです。
また、融資を申請する際も、元々会社の決算書類は複式簿記で作成されていますので、金融機関側としても、資料として信用しやすくなります。
法人の場合、ハードルは高いが、代表者が借入の連帯保証人にならなくて良いケースも出てきている
これまでは融資を受ける際に、代表取締役や実質的経営者が連帯保証人となることを求められるケースが多かったですが、「経営者保証に関するガイドライン」という指針ができ、「法人の借入に対する経営者の連帯保証は外していこう」という方針が明確になりました。
そのため、お金を借りる際も、個人事業だと当然自分の名義で借り入れするしかありませんが、法人だと、法人の名義、しかも代表者の個人保証がないケースで借りられる可能性もあります。(ただ、あくまで可能性であり、従来と同様、個人保証を求められる可能性もあることは承知しておいて下さい)
いずれにせよ、以前に比べ、金融庁など公的機関も「個人保証によらない融資」を求めており、今後も個人保証を減らしていく、という流れは強まっていくのではないかと思います。
このように、法人は信用度の高さだけでなく、制度上、経営者に対し有利になる仕組みも作られています。
ただ、このような制度に関する情報を、経営者個人が仕事をしながら集めていくことは、非常に大変です。
会社設立を専門とする事業者や、税理士・社会保険労務士・弁護士など、複雑な制度に精通したブレーンの力を借りることで、あらゆる制度を活用した、効率的な経営を実現することができるでしょう。
(参考書籍:らくらく個人事業と株式会社 「どっちがトク?」がすべてわかる本)