会社の資金調達、融資と出資、どちらがいい?

会社の資金調達方法としてメジャーなのは、金融機関から融資を受ける方法と、第三者などから出資をしてもらう方法です。

 

両方の特徴・メリット等を解説します。

 

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融資と出資の端的な違い

融資と出資の違いを端的に述べると、

  • 返済の必要があるか
  • 負債とみなされるか否か(会計上の扱い)
  • 出資を受けることで、創業者の決定権が他者に拘束される可能性もある

という点でしょう。

 

会計上の観点に関しては、ここでは触れずに、融資の返済・出資に関して書いていきます。

 

融資は返済の必要があり、経営者などの連帯保証が必要になるケースも

 

融資に関していると、借入ですので、返済義務があるのは当然です。

 

また、代表取締役や役員、実質経営者などが、借入の際に連帯保証をしたり、担保を差し入れることを要求されることがあります。

 

数年前より、経営者保証に関するガイドラインというのが策定されており、その中で資本と経営の分離がされていれば、代表取締役などを連帯保証から外すという動きもあります。

 

ただしこれは、弁護士・税理士など経営者保証ガイドラインに通じた専門家と連携しながら進める必要がありますので、創業当初の資金調達では、経営者の連帯保証のない融資というのは少し難しいかもしれません。

 

また、当然返済ができなくなると、金融機関が債権回収のフェーズに入り、返済できない場合は会社の民事再生や破産、代表者が連帯保証をしており返せない場合は連帯保証人の自己破産なども視野に入ります。

 

このように、当たり前のことですが、返済できなかったときのリスクがあることは心得ておいた方が良いでしょう。

 

また、当然ですが、借入に伴う利子の支払いの必要性もあります。

 

加えて、金銭消費貸借証書に記載されている期限の利益喪失事項(これに当てはまったら、すぐに全額返済してもらいますよ、という事項)に該当する場合は、即刻返済を行わざるを得ず、もし返済が不可能な場合は、経営破綻に直結する事態になる可能性もあります。

出資は返済リスクこそないが、経営権の一部を他者に渡すことになる

出資は借入と異なり、毎月継続して返済するなどの必要はない反面、会社の「株式」を出資者に渡すことになります。

 

現在の会社の株式を渡す、将来の株式の予約権(新株予約権)を渡すなどの方法がありますが、いずれにしても創業者の持株の比率は希薄になりますので、創業者の決定権は弱まることになります。

 

特に、創業者の持株比率が

  • 3分の2を下回ると、単独での特別決議に必要な議決権がなくなる
  • 過半数を下回ると、普通決議に必要な議決権がなくなる
  • 3分の1を下回ると、特別決議を拒否するために必要な議決権がなくなる

とされており、特に、創業者・仲間の持株比率が3分の2以上、過半数以上であるかというのは、決定権を大きく分ける分水嶺となります。

 

できるだけ3分の2の株式は、創業者自身や会社のボードメンバーで有しておくことが重要ですし、株式の過半数に関しては、経営の独立性を保つための非常に重要なラインになります。

 

そのため、持株比率3分の2~過半数は、経営の決定権を持つためにも、守り抜くようにした方がいいと言えましょう。

 

結局、会社の資金調達、融資と出資、どちらがいい?

ここまで書いてきてなんですが、結論はケースバイケース、というところです。

 

あくまで堅実なビジネスとして100%株式を自分で持ち、オーナーとしてやって行きたい場合は、融資を活用するべきですし、逆にベンチャーなど社会的に大きな変革を行う事業の場合は、第三者・ベンチャーキャピタルから出資を受けると共に、VCや出資者と二人三脚でやって行く必要があるでしょう。

 

ベンチャーキャピタルも、慈善事業で出資を行っているわけではありません。

成長の可能性がある企業でないと、出資を受けることは難しいでしょう。

 

また、ベンチャーキャピタルと契約するときは、出資にかかるガチガチの契約書を締結するケースがほとんどと思いますので、契約条項や、相手が何年くらいでのEXITを想定しているかなどを考え、覚悟を決めて出資の受諾をすることが必要でしょう